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第29回目

第29回「REACH(リーチ)」とはなにか 2

まず、REACH(リーチ)について簡単に説明させてもらいます。
これは、日本語ではEU化学物質規制と言われています。

<リーチ(REACH)について>
Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction of Chemicals の頭文字である
欧州連合(EU)の化学物質規制です。

Registration;   登録
Evaluatio;   評価
Authorisation;   認可
Restriction;   制限
Chemicals;   化学物質
のことです。
2007年6月1日に成立したEUの法律です。
20世紀の半ば以後に急増した市販化学物質について、とりあえず生産(輸入も含む)量が多いものを優先させながらも、そのリスクを今後およそ10年間に残らず評価し、低減させることを目指す画期的な法律です。
輸入物質も対象とされるので、その効力はヨーロッパ以外の諸国にもおよぶとみられます。したがって、日本から輸出する場合は適用されます。
リーチは人類社会が全体として化学物質汚染の脅威を克服するための導火線になることを期待されている法律です。
この法律なかで、高懸念物質(SVHC)のAuthorisation(認可)が最も重要になります。

<リーチ(REACH)とローズ(ROHS)の違いについて>
ローズ(ROHS)はRestriction of Hazardous Sbustances の頭文字です。
直訳すると「危険物に関する制限」になります。
正式には、「電機・電子機器中の特定有害物質の使用制限」と言わます。
リーチ、ローズともにEUにおける化学物質関連の規制です。
ローズは、すでに2006年7月より実施されています。
ローズは製品(電子、電気用品)に含有される6つの有害物質の規制です。


  1. 水銀
  2. カドミウム
  3. 六価クロム
  4. ポリ臭化ビフェニール
  5. ポリ臭化ジフェニルエーテル

以上6物質の使用制限に関する欧州議会および理事指令といわれ、電気電子使用禁止・制限する規制であり、これも予防的取組の原則をその基礎とする規制です。
ローズ指令は適用範囲を狭くし、ピンポイントに規制を行っているのに対しリーチは化学物質の包括的な管理を目指す規制といえます。

<リーチの実施手順>
リーチの規制は、化学物質の年間生産量や毒性によって実施される時期がずれています。

(表1)生産量別の実施時期
年間生産(輸入)量
おもな登録データ
登録期限
1~10トン
化学的性質と用途
皮膚への刺激性・腐食性
ミジンコに対する毒性
2018年5月末
10~100トン
上記に加えて
急性毒性
亜急性一般毒性(28日)
変異原生
藻類に対する毒性
環境における分解性
2018年5月末
100~1000トン
上記に加えて
亜急性一般毒性(90日)
発生毒性
生殖毒性
魚類とミミズに対する毒性
生物濃縮性
2013年5月末
1000トン以上
上記に加えて
慢性一般毒性
発がん性
鳥類、無脊椎動物および
植物に対する毒性
2010年11月末

<リーチの内容説明>
REACH(リーチ)は登録、評価、認可、制限と4つの項目がありますが、登録、評価と
認可、制限の2つに大きく分かれます。
登録、評価はすべての化学物質について適用されます。
しかし、特に有害性高い物質(これを高懸念物質(こうけねんぶっしつ:SVHC)と言う)については
認可が必要とされます。
認可がREACH(リーチ)の中で最も大事な内容になります。

1.登録(Registration)
  1トン/年以上の化学物質が対象
登録情報は数量に応じて段階的に増加
ポリマーに2%以上含まれ、合計1トン/年以上となるモノマーも登録対象です。
2.評価(Evaluation)
  当局が登録情報の適合性の確認、試験提案の評価を行い、必要に応じて産業界に情報提供を要請します。
3.認可(Authorisation)
  高懸念物質のうち認可対象物質は、原則的には上市禁止とし、用途ごとに製造、輸入、使用を許可性とする。
CMR(発がん性、変異原生、生殖・発生毒)
PBT(難分解性、蓄積性、毒性)
vPvB(極難分解性、極蓄積性)
内分泌かく乱物質等(環境ホルモン)
等の種類がある。
4.制限(Resutriction)
  3.の認可が必要な物質の内、人や環境に容認しがたいリスクがある場合、製造、輸入、使用について制限します。

 

<認可対象物質について>
認可対象物質とはいわゆる毒性があり、自然界で分解されにくい物質です。
これは、高懸念物質(こうけねんぶっしつ)と言われます。
英語では、ubstance(物質) of ery igh oncern(懸念) と言われ、
SVHC(エスブイエッチシー)と略語で言われる。
認可対象物質で制限の対象になった物の上市は原則禁止です。

<高懸念物質(SVHC)の種類について>
高懸念物質(SVHC)は次の6つに分類されます。

  1. 発がん性物質(CMR)
  2. 変異原生物質
  3. 生殖・発生毒性物質
  4. 難分解性・生物蓄積性・有害性物質(PBT
    ersistent、io-accumulative and oxic)
  5. 極(ごく)難分解性・極(ごく)生物蓄積性物質(vPvB
    ery ersistent and ery io-accumulative)
  6. その他上記物質と同等の懸念を引きおかす物質

高懸念物質(SVHC)数は約1500物質ぐらいと考えられています。
最近第1回目の候補が提案されました。これから順次候補が決まり、正式に決定されます。

(表2)2008年10月9日に公表されたSVHC候補リスト15物質
NO.
日本語名
英語名
CAS
(キャス)ナンバー
分類
用途
1 アントラセン Anthracene 120-12-7 PBT 木材の保存剤や殺虫剤
2 4,4’-メチレンジアニリン 4、4’-Diaminodiphenylmethane 101-77-9 CMR ポリウレタンの中間体の原料
3 フタル酸ジ-n-ブチル Dibutyl phthalate(DBP) 84-74-2 CMR 塩化ビニル、酢酸ビニル等の可塑剤
4 塩化コバルト Cobalt dichloride 7646-79-9 CMR 塗料、めっき、インキ乾燥剤用原料
化審法既存化学物質
5 五酸化ニヒ素 Diarsenic pentaoxide 1303-28-2 CMR 木材防腐,防蟻剤
6 三酸化ニヒ素 Diarsenic trioxide 1327-53-3 CMR 液晶ガラスや鉛ガラス製造時の清澄剤
7 ニクロム酸ニナトリウム・ニ水和物 Sodium dichromate,dihydrate 7789-12-0 CMR 顔料、金属表面処理
8 ムスクキシレン 5-tert-butyl-2,4,6-trinitro-m-xylene 81-15-2 vPvB 香水、セッケン等の香料
化審法第一種監視化学物質
9 フタル酸ジ(2-エチルヘキシル) Bis(2-ethyl(hexyl)phthalate
(DEHP)
117-81-7 CMR 塩化ビニル、酢酸ビニル等の可塑剤
10 ヘキサブロモシクロデカン(異性体混合物) Hexabromocyclododecane(HBCDD) 25637-99-4 PBT 難燃剤
化審法既存化学物質
11 短鎖型塩化パラフイン Alkanes,C10-13,chloro
(Short Chain Chlorinated Paraffins)
85535-84-8 PBT 難燃剤、可塑剤
化審法データーベースにない
12 トリブチルスズオキシド Bis(tributyltin)oxide 56-35-9 PBT 殺菌,防カビ剤
化審法第一種監視化学物質
13 ヒ酸鉛 Lead hydrogen arsenate 7784-40-9 CMR 農薬(日本では失効)
化審法既存化学物質
14 ヒ酸トリエチル Triethyl arsenate 15606-95-8 CMR 化審法データーベースにない
15 フタル酸ブチルベンジル Benzyl butyl phthalate
(BBP)
85-68-7 CMR 塩化ビニル、ニトロセルロース等の可塑剤
ここで、注意すべき点は、可塑剤が3種類入っていることです。
フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ブチルベンジルの3種類です。
製品での規制値は0.1%(1000ppm)です。
製品に以上の3種類の可塑剤が0.1%以上含まれている場合はEUに輸出できない恐れがあります。

<高懸念物質(SVHC)の有害性の説明>

1.発がん性物質(carcinogenicity) CMR
  推定 1400種
狭義のがんである悪性腫瘍だけでなく、良性腫瘍も含めて一般に腫瘍を体内に生み出す作用を意味します。
これは、良性腫瘍といえども悪性腫瘍に転化する可能性が高いからです。
腫瘍の細胞は正常細胞の遺伝情報が変化することによって生じますが、この変化を誘導する発がん因子として一連の化学物質が大きな位置を占めています。そのような作用を示す化学物質を発がん物質(carcinogen)と呼ばます。
なお、発がん因子としては放射線やウイルスもよく知られています。
2.変異原生物質(mutagenicity
  遺伝情報を担っているDNAに損傷(化学構造の変化)をもたらし、突然変異を引き起こす物質です。
遺伝子毒性(genotoxicity)とも呼ばれます。
体細胞に生じた突然変異は、がん細胞を生み出すきっかけになることはあるが、次世代には影響をおよぼしません。
しかし、生殖細胞に突然変異が生じると、次世代の遺伝的形質が変化する可能性があり、このときは変異原生は遺伝毒性としての性格をしめします。
3.生殖・発生毒性物質(reproductive toxicity
  狭義には、妊娠以前に体内に取り込まれた化学物質が生殖機能に悪影響をおよぼし、不妊や妊娠率(fertility)の低下を招く作用を意味します。
4.難分解性・生物蓄積性・有害性物質(PBT物質)
  難分解性であり、かつ生物蓄積性があり、毒性もあるものです。
生物濃縮係数は2000を超えるものです。
5.極難分解性・極生物蓄積性物質(vPvB物質)
 

ery ersistent and ery io-accumulative)
vPvBは難分解性と生物蓄積性のみで決まり、有害性の強弱は考慮されません。
生物濃縮係数は5000を超えるものです。

(表3)有害性と半減期の基準
クライテリア
4.PBT物質
5.vPvB物質
P:難分解性
半減期(日)
半減期(日)
海水中
  >60   >60
淡水,河口水中
  >40   >60
海水底質中
  >180   >180
淡水底質・河口水底質中
  >120   >180
土壌中
  >120   >180

B:生物蓄積性
   
生物濃縮倍率BCF
  >2000   >5000

T:有害性
   
海水または淡水生物無影響濃度(NOEC)
<0.01mg/L
指定なし
ヒト健康影響CMR   
C:カテゴリー1,2
M:カテゴリー1,2
R:カテゴリー1,2,3
ヒト健康影響指令67/548/EECによる分類
慢性毒性
(分類T,R48,Xn,R48)

 

6.その他上記物質と同等の懸念を引きおこす物質

<欧州化学品庁(ECHA)について>
リーチによって約3万種の化学物質が登録されると予想されている。この膨大な登録およびその関連業務を処理するために、EUでは新たに欧州化学品庁(European Chemicals Agency:ECHA)をフインランドのヘルシンキに設立されました。
人員 450人 予算 100億円の体制です。

<まとめ>
REACH(リーチ)という言葉はあまり知られていませんが、これから日本でもじょじょに影響が出てくると思います。EUの規制なので直接輸出にかかわっていないところは遠い世界の事の出来事のように思いますが、ROHS(ローズ)のように世界標準になる可能性が高いと考えられます。
ノーデータ、ノーマーケットと言われるように、製品に使っている成分の安全データーを持っていないと商売が出来なくなると言われています。
製品の中に入っている化学物質の成分とその安全データを地道に蓄えて、いつでも検索できる体制が必要になってくると思います。

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