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第38回目

第38回「界面活性剤(かいめんかっせいざい)」について


今回は界面活性剤について説明いたします。
界面活性剤という言葉は聞いたことがある人は多いと思います。
界面活性剤とは、一言でいえば、工業用石けんのことです。
もちろん、家庭用石けんや洗剤も含みます。
ただ、働きとしては単に洗浄するだけでなく、もっと広い働きがあります。
界面活性剤の働きとしては、液体に溶かしたとき、その液体の表面張力をいちじるしく低下させます。


(1)<界面活性剤の定義>
界面活性剤分子には、水になじみやすい部分(親水基:しんすいき)と、油になじみやすい部分(親油基:しんゆき)を持っています。
そのことにより、水の表面張力を弱める作用があります。

まず界面(かいめん)とは境界面(きょうかいめん)のことです。
説明のために、ガラスのコップに水をいれたとします。
そうすると、水がガラスに接しているところが界面(境界面)です。
また、水の上の空気と接しているところも界面(境界面)です。
界面活性剤とはこの界面(境界面)の性質を変化(活性)さすものです。

(2)<界面活性剤の使用例>

それでは、具体的に界面活性剤の使用例を紹介いたします。
ここで紹介するのは、身近にあるものです。これ以外にも私たちの身のまわりには界面活性剤が入った物を多く使っています。

A)食品
  水と油を一様に混ぜ合わせるため、乳化剤として、界面活性剤が使用されています。
  乳化した食品  
    マーガリン、バター、マヨネーズ、アイスクリーム
  食品に用いてよい界面活性剤(乳化剤)は「食品衛生法」で決められています。
使用して良い物質
   1)グリセリン脂肪酸エステル
   2)ショ糖脂肪酸エステル
   3)ステアロイル乳酸カルシウム
   4)ソルビタン脂肪酸エステル
   5)プロピレングリコール脂肪酸エステル
これ以外に天然の乳化剤があります。
植物レシチン(大豆油、菜種油)と、卵の黄身のレシチンです
B)化粧品
 

乳液、クリーム、ファンデーション、口紅

食品の場合と違い、直接体内に取り込まないので、食品の場合より使用できる物質の規制がゆるくなっています。
「薬事法」に基づく「化粧品基準」によって、使用が禁止されているもの以外はすべて使えます。

C)医薬品
  主剤として使われているものには、殺菌剤があります。
逆性石けんと呼ばれる、塩化ベンザルニコニウムは陽イオン界面活性剤です。

 

(3)<界面活性剤の働き>
それでは界面活性剤の働きを分類しますと次のようになります。

A)混ざり合わないものを混ぜる(乳化・分散)
    マヨネーズ
B)濡れやすく・しみ込みやすくする(湿潤・浸透)
    コンクリート
C)泡をたてる、泡を消す(発泡・消泡)
    消泡剤
D)汚れを落とす(洗浄)
    石けん、洗剤
E)軟らかくする・滑りをよくする(柔軟・平滑)
    リンス
F)静電気を防ぐ(帯電防止)
    静電気防止スプレー
G)錆びを抑える(防錆)
    防錆剤
H)染めむらを防ぐ、色落ちを防ぐ(均染・固着)
    捺染剤(なっせんざい)
I)菌を殺す(殺菌)
    逆性せっけん

 

(4)<シャボン玉>
次に、シャボン玉の説明をします。
水をストローの先に付けて、吹いてみてもシャボン玉はできません。
せいぜい、水滴が飛ぶぐらいです。
次に、この水に石けんを溶かして同じようにストローを付けて吹くとシャボン玉ができます。


水に石けんを溶かすと何が変わったのでしょうか。
水は非常に表面張力が大きいのです。ハスの葉の上できれいな水玉ができます。
同じように、石けんを溶かした水をハスの葉の上に置いても綺麗な水玉はできません。

すなわち、石けんは水の表面張力を下げる働きをしたわけです。
表面張力が大きいと(水のように)、空気を水の中に入れても水どうしが強く引張りますので、膜がすぐに破れて、シャボン玉はできません。
一方、石けんを入れた水は表面張力が小さいので、シャボン玉の水の膜を強く引っ張らないので、しゃぼん玉膜が破れないので、シャボン玉ができて空に飛んでゆけるのです。

表1 「表面張力一覧」  (単位:0.001N/m)(N,ニュートン 約100g)
材質 物質 表面張力
溶剤
ヘキサン
18
エチルアルコール
22
石油
26
トルエン
29
73
樹脂
テフロン
18
PP(ポリプロピレン)
29
PS(ポリスチレン)
33
PET(ポリエステル)
43
ナイロン
46
金属
水銀
486
1720

溶剤は、樹脂と表面張力の値が近いので、樹脂の表面をぬらすことができます。
しかし水は、樹脂の表面張力よりかなり大きいので、樹脂の表面では広がりません。
表から分かるように、水は液体の中では表面張力が非常に大きいです。

(5)<せんたく>
石けんで洗うと油汚れを取ることができます。
これは、石けん(界面活性剤)は、水と油を溶け合わせる作用があるからです。
ドレッシングは酢(水溶液)と油を同じ容器に入れています。2つの層に分かれています。
使う時によく振って混ざりあわせてからサラダなどにふりかけます。
しばらくそのままに置いておくとまた分離します。
これと違ってマヨネーズは振らずにそのまま使います。マヨネーズには界面活性剤(天然の界面活性剤である卵の黄身に入っているレシチン)が入っているためです。

(6)<帯電防止作用>
界面活性剤には表面に水を吸収しやすい膜を作ったり、滑りやすくすることで静電気の発生を抑えることができます。
合成繊維やプラスチック製品は静電気を帯びやすく、それゆえチリや汚れがつきやすく、汚く見えます。
界面活性剤を表面に塗布したり、樹脂に練りこんだりしてこれらを防ぎます。
表面に界面活性剤を塗るのは安くて簡単ですが、時間とともに界面活性剤が取れて、効果がなくなります。

(7)<界面活性剤の分類>
それでは、少し難しいですが、界面活性剤の分子の様子を説明します。

界面活性剤はその分子中に、炭化水素(油)のような水に溶けない疎水基(そすいき)と、水によくとける親水基(しんすいき)と呼ばれる部分の両方を持っています。

界面活性剤の分類は親水基(赤い丸)の性質によって分けられます。

(8)<陰イオン系界面活性剤>

(例)石けん、合成洗剤
  A)カルボン酸塩
B)スルホン酸塩
C)硫酸エステル塩
D)リン酸エステル塩
陰イオン界面活性剤は水溶液中でイオンかい離してアニオン部(-)が界面活性を示す物質です。
陰イオン界面活性剤の歴史は古く、よく知られている石けんからはじまり、次いで合成界面活性剤が表れ繊維工業で大いに利用されました。
石けんと合成洗剤との違いは、石けんは脂肪酸のナトリウムおよびカリウムの塩に限られています。それ以外は合成洗剤です。
*脂肪酸(しぼうさん) : 動物や植物の油のことです。
  これらをカセイソーダや水酸化カリウムと炊くと石けんができます。
カセイソーダと煮たものは固体の石けんになります。
水酸化カリウムと煮たものは液体の石けんになります。

(9)<陽イオン系界面活性剤>

(例)逆性せっけん、リンス、柔軟剤
  A)脂肪族アミン塩およびその4級アンモニウム塩
B)芳香族4級アンモニウム塩
C)複素環4級アンモニウム塩
陽イオン系界面活性剤は、水溶液中でイオンにかい離して陽イオン(+)となる部分が界面活性を示す物質です。
乳化力、分散力、吸着力、気泡力、浸透力などの界面活性を持ちます。
さらに、殺菌力、帯電防作用なども持っています。
繊維類の染色助剤および柔軟仕上げ剤、化粧品のリンス、トリートメント、医療用消毒殺菌剤、表面撥水剤(ひょうめんはっすいざい)などに用いられてます。

(10)<両性界面活性剤>

 
  A)ベタイン
B)アミノカルボン酸塩
C)イミダゾリン誘導体
両性界面活性剤はその分子構造において陽イオン性官能基(+)と陰イオン性官能基(-)を1つ以上含む物です。
両性界面活性剤は毒性が少なく、殺菌力が強力で耐硬水性に優れています。
可溶化性、乳化性、湿潤性、洗浄性がすぐれています。

(11)<非イオン性界面活性剤>

 
  A)エーテル型
B)エーテルエステル型
C)エステル型
D)含窒素型
水溶液でイオンにかい離する基を有しない界面活性剤です。
陰イオン界面活性剤に次いで大量に使用されています。
水に対する溶解性はイオン系活性剤は温度が上がるとよく溶けますが、非イオン性界面活性剤は温度が低いほうが良くとけます。

(12)<界面活性剤の安全性>
界面活性剤は少ない量で、働きが大きいのでいろいろな用途に使われます。
しかし、働きが大きいゆえに副作用が問題になることがあります。
副作用の害として言われているものは、つぎのような内容です。
   (1)肌に害がある。(肌が荒れる。カサカサになる。)
   (2)肌から浸透して、健康を侵す
   (3)発がん性、催奇性が強い
   (4)環境を汚染する

(13)<まとめ>
界面活性剤は驚くほど色んな作用があります。そしていろんな用途に使われています。
最も種類が多いといわれています。
あまり表面には出てきていませんが、その働きはすごいものです。
「縁の下の力持ち」だと思います。
もし、界面活性剤がなくなれば、私たちの生活が成り立たなくなるほどです。
しかし、最近は界面活性剤の毒性が問題になってきています。
化粧品など、直に皮膚に付けることによる皮膚の荒れやアトピーに疑いが持たれています。
ハミガキなどは、直に口に入れることによる慢性毒性の心配もあります。
界面活性剤があることによる利便性(りべんせい)の向上と、その害とのバランスが難しいところに来ています。
まったく無害というものはありません。お餅も食べすぎれば死ぬこともあります。
また、人の死亡率は100%です。不死と言うことはありません。病気もします。
まず、前提としてこのことを理解したうえでどこまで害を防ぐかと言うことを考えなければなりません。
今のところ、メーカーと被害を受けたユーザーの考えかたは並行線です。必ずしもかみ合っているとは言えません。
この原因の1つは、有害性の確認方法がまだ不十分だと言うことと、物質の安全性が調べられた物質が少ないことだと思います。
今の日本では、はっきりと有害性が確認されたもの以外は、使って良いことになっています。
EU(ヨーロッパ)ではリーチと言う新化学物質規制が制定されました。
無害と証明された化学物質しか使えなくしようとするものです。
日本も、今後この方向に進んで行くと考えられます。

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