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第49回目

第49回「耐光試験(たいこうしけん)」について 2


今回は、前回(第48回)に引き続いて「耐光試験」について説明いたします。
まず、耐光試験の促進性についても説明したいと思います。

(1)<耐光試験機の促進性>
促進性を説明するためには、正確性は少し犠牲にして、ある程度内容を単純化する必要があります。
単純化するためのいろいろな考え方があります。
最も簡単な考え方は、照度(しょうど;単位ルックス)を考えて、その促進性を考えることです。
もう一つは照射エネルギーで考える方法です。

(2)<照度(ルックス)で考える場合>
書籍の背の印刷部は絶えず蛍光灯などの光が当たっています。
室内の照度は場所や目的によって違いがありますが、通常の室内では500ルックスぐらいです。
今、仮に室内の本箱に書籍を1年間置いておいて、その結果書籍の背の印刷が退色して薄くなったとします。
通常、夜中は照明を消すと思われますので、1日16時間照明が付いてるとします。
そして、毎日照明がついていたとすると、1年間の全照明量は次のようになります。

500ルックス × 16時間 × 365日 = 2,920,000ルックス(1年間)

になります。

キセノンアーク灯試験機の照度は約10万ルックスです。
したがいまして、この試験機だ何時間照射すれば、上記の2920000ルックス(1年間)になるかと言えば、

2,920,000ルックス ÷ 100000ルックス = 29.2時間(1日と5時間)

となります。これは、1日と5時間ほどです。
実試験では1年間かかるところが、わずか1日と5時間で試験が終わることになります。
これは、室内の照度の500ルックスを200倍の100000ルックスで試験を行っているためです。

ただ、この計算は照度だけなので、可視光線だけの話であって紫外線については考えていません。室内の場合は紫外線の量はわずかしかないのでおおざっぱにはこの計算が使えると思います。

(3)<光の照射エネルギーで考える場合>
キセノンアークの耐光試験機には、各種の容量(光の強さ)のものがあります。
基本的には50W(ワット)/㎡から100W(ワット)/㎡が標準です。
今、かりに80W/㎡の試験機を使用するとします。
これの照射エネルギーを計算しますと、

80W/㎡は、1時間当たり 80W×3600秒=288000J/㎡=288KJ/㎡となります。
          エネルギーの単位はジュール(J)です。

(屋内の場合)
今、屋内の照度が500ルックスとして、1日に16時間照射で毎日1年間照射したとします。
1時間当たりの照射エネルギーを計算します。
   1.46mW/㎡×500ルックス×0.001×3600秒=2628ジュール/㎡=2.628KJ/㎡
になります。
                    注:555nmの光は1ルックスで1.46mW/㎡になります。

それでは、1年間での照射エネルギーは、
   2.628KJ/㎡ ×16時間 × 365日 =15347KJ/㎡になります。

蛍光灯での1年間の照射エネルギーは、キセノン耐光試験機では何時間かを計算します。
   15347KJ/㎡ ÷ 288KJ/㎡ = 53.3時間になります。
室内で500ルックスの1年間がキセノン耐光試験では、53.3時間(2日と5時間)になります。

(屋外の場合)
太陽の1年間の照射エネルギーは、233MJ/㎡です。ただし、これは300nm~400nmの紫外線部のエネルギーです。
したがって、屋外で1年間に相当するキセノン耐光の照射時間は次のようになります。

   233MJ/㎡ × 1000 ÷ 288KJ/㎡ = 809時間(33日間、約1月)
になります。

(注)
これはあくまで、多くの仮定をした上での目安です。
実際の場合は、試験体によって吸収する光の波長も違いますし、温度や湿度の影響もあります。一概には言えないところがあります。

(4)<耐光試験関係の規格>
耐光試験機の規格にはJISだけでも多くの規格が決められています。
代表的な規格にはつぎのような物があります。

(耐光(侯)試験のJIS規格)
1
  JIS B 7751 紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験機及び耐侯性試験機
2
  JIS B 7753 サンシャインカーボンアーク灯式の耐光性試験機及び耐侯性試験機
3
  JIS B 7754 キセノンアークランプ式耐光性及び耐侯性試験機
4
  JIS D 0205 自動車部品の耐侯性試験方法
5
  JIS E 4037 鉄道車両 ー 部品構成 - 耐侯性試験方法
6
  JIS K 560-7-6 塗料一般試験方法ー第7部:塗膜の長期耐久性 - 
第6節:屋外暴露耐侯性
7
  JIS K 560-7-7 塗料一般試験方法ー第7部:塗膜の長期耐久性 - 
第7節:促進耐侯性及び促進耐光性(キセノンランプ法)
8
  JIS K 560-7-8 塗料一般試験方法ー第7部:塗膜の長期耐久性 - 
第8節:促進耐侯性(紫外線ランプ法)
9
  JIS K 7101 着色プラスチック材料のガラスを透過した日光に対する色堅牢度試験方法
10
  JIS K 7102 着色プラスチック材料のカーボンアーク灯光に対する色堅牢度試験方法
11
  JIS L 0801 染色堅牢度試験通則
12
  JIS L 0841 日光に対する染色堅牢度試験方法
13
  JIS L 0842 紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法
14
  JIS L 0842 キセノンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法
15
  JIS L 1041 樹脂加工織物及び編物の試験方法
こんなに多くの規格がある理由としましては、
(1)対象商品が多くあるため
   樹脂、繊維、塗料、自動車、鉄道等試験を行う商品ごとに規格があるため
(2)耐光試験機の光源が何種類かあるため
   紫外線カーボンアーク灯
   サンシャインカーボンアーク灯
   キセノンアークランプ

(5)<耐光(侯)試験機の光源の違い>

(1)紫外線カーボンアーク灯試験機
  これは、最初に実用化された耐光(侯)試験機です。
上からの炭素棒電極と下からの炭素棒電極を一定の間隔を開けて、電圧をかけてアーク放電させます。アーク放電で、強烈な光を発します。
紫外線の量が太陽光より多いので、促進性には優れています。しかし、太陽光とは違う波長の紫外線量が多いので、太陽光との相関性は少し悪い所があります。

「アーク放電」
電極間に隙間があて、その電極に電圧をかけて行くと、その隙間を越えて放電が起きます。広い意味で雷の放電のようなものです。

(2)サンシャインカーボンアーク灯試験機
 

紫外線カーボンアーク灯試験機を改良したものです。
カーボンの中に銅粉を混ぜたものを電極に使用して、アーク放電を行います。
特徴としては、紫外線カーボンアーク灯試験機より光のスペクトルが太陽に近くなっています。
また、カーボン電極の長さを長くして、カーボンの取り換え時期を長くしています。

(3)キセノンアークランプ試験機
 

電極にカーボンを使わずに、石英管の中にキセノンの気体を入れて放電するものです。
太陽光にもっとも近い光が出ます。
カーボン電極のように電極が燃えて消耗しないので、寿命が長くなります。
ただ、使用されだした歴史が短いので過去の試験データーの蓄積が少ないです。
そのため、過去のデータと比較出来ない場合があります。
光の強さが、夏の昼の太陽光と同じぐらいなので、屋外用品の耐光試験としての促進性があまりないのが欠点です。

(6)<光のスペクトル>
耐光(侯)試験機として使用する場合の条件として、次の3つの項目を満たす必要があります。

(1)促進性
 

太陽による光の場合も、屋内での人工照明の場合も、実使用における退色より、耐光(侯)試験機の方が短い時間で退色する必要があります。
これを、促進性と言っています。
屋内の人工照明で2年間で変色したものが、耐光(侯)試験機では1ケ月で同じような変色した場合は促進性が24倍あったと言います。

(2)相関性(相似性)
 

実使用の場合と、耐光(侯)試験機では同じような変色の仕方をしなければなりません。
違う色に退色した場合は試験機としては問題があります。
あくまで、促進のために試験機を使用するので同じように変色する必要があります。

(3)再現性と汎用性
 

試験をするたびに違った結果がでるようであれば、試験機の信頼性に欠けます。
毎回同じような結果が出ることと、違うメーカーの機種でも同じような結果が出ることが必要になってきます。
A社の耐光(侯)試験機とB社の耐光(侯)試験機とでは違う結果がでるようでは困ります。
また、1年前と今年では違った結果がでるのもこまります。

(7)<まとめ>
耐光試験のようにごく普通に行われている試験でも、1歩深く考えればかなり難しい内容になります。
まず、光自身が紫外線、可視光線、赤外線と種類があることです。
照射強度とか、照射エネルギーとか日ごろあまり考えなかった内容を含んでいます。
それと、屋内と屋外では光の強度や種類が違います。
自動車みたいに屋外で何年も使われるものもあれば、屋内で使われるポスターでは光に対する抵抗性はぜんぜん違います。
それ以外に、変色性だけではなく、ゴムやプラスチックのようにその物の強度が変化する場合もあります。
今回の内容は概略の話です。正確性には多少かけるところがあります。そのことをご理解していただいてお読みください。

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