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第37回目

第37回「粘着剤」について 1


今回は粘着剤について説明いたします。
ガムテープ、布テープ、セロテープ、ビニールテープなど粘着剤を塗ったテープが多く使われています。粘着テープと同じ構造でラベルとかシールにも粘着剤が多く使われています。
粘着テープは貼るとすぐに使えるので、便利なので使用量も増えてきています。
それでは粘着剤について説明いたします。


(1)<粘着剤とはなにか>
粘着剤が使われている代表的なものとして粘着テープがあります。
粘着テープの特徴は何かと言いますと、次の2つがあります。
   (A)ほとんどなんにでもひっつけることができる。
   (B)貼ってすぐにひっつくこの2つの特徴のために粘着テープが多く使われます。

それでは、この2つの特徴について説明いたします。

 

(2)<特徴(A)なんにでもひっつく>

これは接着剤との比較で、特徴として言えることです。
昔、子供のころ使ったでんぷんのりは紙にはよく付いたが、PPフイルムとか、プラスチックや金属には付かなかったと思います。
接着剤と違って粘着テープは紙でもプラスチックでも金属でも付きます。
貼る相手がなんでも良いので粘着テープが広く使われるわけです。
ただ、粘着テープはなんにでも付くといいましたが、接着剤に比べるとあまり強くは付きません。

 

(3)<特徴(B)すぐに付く>

これも粘着テープの非常に大きな特徴です。接着剤は通常貼ったあと接着剤が固まるまで待たないといけません。
粘着テープは貼ったら糊が固くなるまで待つ必要はありません。
この即効性のため多くの用途に使われます。
欠点は(2)で説明しましたように貼りつく強度が弱いことと値段が高いことです。

 

(4)<粘着テープの特徴はどこからきているのか>

それでは上記の粘着剤の特徴はどこからきているのでしょうか。
粘着テープの糊面を手でさわるとネバネバした感じがすると思います。
このネバネバ感は時間がたっても変わりません。いつまでもネバネバしています。
このいつまでもネバネバしていることが、粘着テープの特徴の原因です。
このネバネバしているためになんでもひっつくし、すぐにひっつくのです。

 

(5)<ネバネバとはなにか>
それではネバネバとはどう言うことでしょうか。少し科学的に説明します。
ネバネバの特徴はまず粘着剤が軟らかいことです。軟らかいと言うことはテープを貼る相手の形になじみやすいことです。平面でも曲面でも貼ることができます。また、粘着剤が相手の表面になじみやすいと言えます。
この軟らかさを科学的に表現すると、ヤング率(弾性率)が小さいことです。
ヤング率が小さいことは少しの力でよく伸びると言うことです。
ヤング率が非常に低いと、見た感じがネバネバしているようにみえます。
たとえば、水あめなどはネバネバの代表です。
ゴムのヤング率は鉄の1/10000しかありません。
粘着剤として使うためには、ヤング率が10^7dyn/c㎡台以下でないと使えません。

(表1) 「物質のヤング率表」

単位 ゴム ガラス ポリエチレン 木材
dyn/c㎡
2.1×10^12 1.5×10^7 7.13×10^10 4.0×10^8 1.3×10^10
kg/m㎡
21000
0.15
713
4
130
GPa
210
0.0015
7.13
0.04
0.13

10^12:10の12乗を表します
dyn(ダイン):力の単位です。1dyn(ダイン)は1gの物体に1cm/秒秒の加速度を与える力です。
Gpa(ギガパスカル):G(ギガ)は10の9乗のことです。Pa(パスカル)は圧力の単位です。
     1Pa(パスカル)は1N(ニュートン)/㎡です。
色々な単位があって非常にわかりづらいです。本ごとに色々な単位で書かれています。

 

(6)<ヤング率計算の説明>

それでは、ヤング率について説明いたします。
昔、ヤング率を習ったような記憶がある方もおられると思います。ヤング率のヤングは人の名前です。
例としてゴムひもの実験で説明したします。
ゴムヒモを図のようにぶら下げて、そのゴムひもの下に重りをぶら下げます。、荷重大きさに比例してゴムひもが伸びる法則です。

荷重を2倍にすると、伸びが2倍になる法則です。

 

(7)<ヤング率の計算>

それでは、ヤング率の計算の説明をいたします。
次の寸法でゴムひものヤング率を求めます。

     (記号)    (具体的寸法)
ゴムひもの断面積  
Am㎡
2m㎡
ゴムひもの長さ  
Lmm
10mm
荷重  
Wkg
3kg
伸び  
Dmm
70mm
これで、ヤング率(弾性率:E)を計算します。
ヤング率は応力「荷重を断面積で割ったもの W/A」をヒズミ「伸びを長さで割ったもの D/L」で割ったものです。
これから、ヤング率が大きいということは、ヒズミが小さくて、応力が大きいと言うことです。
すなわち固い物です。
ヤング率(E)  = 
W / A
D / L
           
 
具体的に上の数字を入れてみます。
 
ヤング率(E)  = 
W / A
D / L
 = 
3÷2
70÷10
 = 
1.5
7
 =  0.21kg/m㎡
                 
この例では、ゴムのヤング率は 0.21kg/m㎡になりました。
上の式から、ヤング率はその物質を元の倍に伸ばす力(kg/m㎡)に相当します。

 

(8)<ガラス転移点>

(7)でヤング率の計算を説明しましたが、樹脂の場合はこのヤング率が温度によって大きく変わります。
ポリエチレン(PE)の容器を室温から冷やして行くと段々と硬くなって行きます。
逆に今度は段々と温度を上げて行くと軟らかくなります。この硬さや軟らかさを数字で表したものがヤング率です。
プラスチックは温度が下がるとヤング率は大きくなり、温度が上がるとヤング率は小さくなります。
粘着剤は温度でヤング率が大きく変わることをうまく利用しています。
粘着剤は通常室温で使いますので、室温でのヤング率が低くないと粘着剤として使うことができません。
それで、粘着剤の原料である樹脂の種類がヤング率の低いゴムやアクリル等に限定されるわけです。

「温度・速度重ね合わせの原理」と言って、粘着テープを早く引きはがそうとすると、上の図の温度が低い時に対応します。温度が低いと粘着剤が固くなります。それで早くはがすと粘着剤が固くなりはがれにくくなります。
例えは少し違いますが、水にゆっくり入ると水の抵抗はほとんどありませんが、水に飛び込むと胸などを打つ場合があります。
この違いは入る速さの違いによるものです。

次に、図2にガラス転移点を書いています。これはこの温度を境にしてガラス状の硬い状態からゴム状の軟らかい物に変わる温度です。この温度が室温より低いほど粘着性はよくなります。
ポリマーのガラス転移温度の一覧表を載せています。

(表2)「ポリマー(樹脂)のガラス転移温度」

ポリマー Tg(ガラス転移温度)
アクリル酸エチル
-20℃
アクリル酸ブチル
-55℃
アクリル酸2-エチルヘキシル
-70℃
酢酸ビニル(酢ビ)
32℃
スチレン(スチロール)
80℃
メタクリル酸メチル(アクリル)
105℃
天然ゴム(イソプレン)
-79度~-69度
ブチルゴム
-75度~-67度

 

(9)<粘着剤の種類>

粘着剤として使える樹脂は(8)で説明しましたように室温で低いヤング率と低い温度のガラス転移温度を持つものに限られます。
そのため、粘着剤の種類としてヤング率が低くくて、ガラス転移温度の低い次の4種類になります。

(1)ゴム系粘着剤
天然ゴムや合成ゴムを主成分にした粘着剤
(2)アクリル系粘着剤
アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを主成分にした粘着剤
(3)シリコン系粘着剤
シリコン樹脂を主成分にしたんメン着剤。
通常付きにくい物にも付く。また耐熱性が高く老化しにくい
(4)その他
ウレタン系粘着剤がある

 

(10)<ゴム系粘着剤の欠点(2重結合を持っている)>

ゴム系粘着剤は最も代表的な粘着剤です。
いろんな相手に貼ることができますし、価格も比較的安いです。
ただ、欠点としては老化性(寿命)が悪いことです。
そのため、後で説明しますアクリル系に取ってかわれつつあります。
なぜゴム系粘着剤が老化しやすいかと言いますと、構造の中に2重結合があるからです。
なぜ二重結合があると劣化しやすいのでしょうか。
このことについて説明いたします。
プラスチックは熱、光、紫外線、酸素、水、オゾンなどにより劣化します。
これらの作用により、高分子のつながりが切れたり,架橋したりして構造に変化を起こし性質が低下します。
二重結合の代表的な劣化は次の4つに分類されます。

(1)オゾン劣化
(2)酸素劣化
(3)熱劣化
(4)光劣化

これらの4つ劣化作用は単独で起こる場合より互いに複合される場合が普通です。

(1)オゾン劣化
二重結合の所にオゾン(O3)が反応して、二重結合を切ってしまって高分子の分子量が低下して、ゴムの性能を低下させる。
(2)酸素劣化
空気中の酸素が、二重結合の隣の炭素に付いている水素原子を引き抜いて過酸化物が生成され、そのため結合が切れたり、架橋して劣化が始まる。
(3)熱劣化

基本的には(2)酸素劣化と同じである。しかし、温度が高くなることにより劣化が促進される。

(4)光劣化
紫外線(可視光線よりエネルギーが高い)、可視光線により結合を切ってしまい、そのため劣化が進む。
光のエメルギーとプラスチックの結合エネルとの関係で、結合を切るだけ光のエネルギーが大きい。

 

(表3)「化学結合のエネルギー(大きいほど切れにくい)」

結合
結合エネルギー 相当光
Kcal/mole
OーH
111.6
紫外線
C-H
98.8
紫外線
C-C
83.1
紫外線
CーCl
78.5
可視光線
C-I
57.4
可視光線
NーN
38.0
可視光線
O-O
33.2
可視光線

(11)<アクリル系粘着剤>

アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを主成分とした粘着剤です。
モノマー組成によっては何も配合しなくても粘着性を発現します。
このため粘着付与剤(タッキファイアー)なしで使うことができます。
粘着付与剤(タッキファイアー)は粘着主成分に比べて分子量が少ない場合が多いです。
分子量が少ないと言うことは老化しやすいし、主成分と分離したり粘着剤の表面にしみだして来る場合もあります。
粘着剤としてはできるだけ使わない方が望ましいと言われています。
アクリル系以外に、その樹脂だけで粘着性を示す樹脂としてはポリビニルエーテルと1部のエチレン/酢酸ビニルコポリマーだけです。

下にアクリル酸エステルの出発原料であるアクリル酸の構造式を書いています。
COOHは有機酸を表しています。このCOOHのところがアルコール基と結合してエステルができます。
この結合したものが、アクリル酸エステルと言われる物で、粘着剤の元になります。

この物は重合すると2重結合をもたないのでゴムに比べて劣化しにくいです。

 

(12)<まとめ>

(A)粘着剤の基本的な性質として次の3点があります。

(1)ガラス転移温度(Tg)
           これが低いほどよい
(2)ヤング率(弾性率)
           これが室温付近で低さが必要
(3)劣化しにくい(2重結合を含まない)
           二重結合を含むと劣化しやすい。

以上の3点の条件を満たすものがアクリル系粘着剤です。
したがって、現在のところアクリル系粘着剤に代わる粘着剤は、なかなか出てこないと思われます。

(B)粘着剤は非常にうまく考えられた製品です。今回説明しませんでしたが、添加剤(安定剤、粘着付与剤(タッキファイアー)、架橋剤、粘度調整剤)や、剥離剤、粘着テープやラベルの基材等、大事なことについては説明していません。

(C)アクリル系粘着剤にしましても、1種類の成分だけではなく共重合等、いろいろと混ぜています。それと、今回は粘着剤の3つの特性(タック、粘着力、保持力)の内ほとんどタックだけに限って説明しております。
あとコスト、生産のやりやすさ、保管、使う上で作業性、環境(臭い、VOC、経口毒性、皮膚毒性)など考慮する項目が多くあります。
以上の要素を考えながら粘着剤が作られています。

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